ボーア模型と水素のスペクトル
原子内の電子は、はしごの横木のように特定の固定されたエネルギー準位にだけ乗ることができ、間には決して座れない。電子が上の横木から下の横木へ飛ぶと、そのエネルギー差を正確に運ぶ1個の光子を出す。これが、水素が滑らかな虹ではなく、鋭くはっきりした色で光る理由である。
公式
1/λ = R · (1/n₁² − 1/n₂²)
- λ — 波長 (m): 電子の遷移によって放出される光の波長
- R — リュードベリ定数 (1/m): 水素のエネルギー準位の尺度を決める固定定数
- n₁ — 下の準位 (—): 電子が着地する、核に近いほうのエネルギー準位
- n₂ — 上の準位 (—): 電子が出発する、核から遠いほうのエネルギー準位
例題
水素原子内の電子がエネルギー準位 n = 3 から n = 2 へ落ちる—バルマー系列の第1線です。R(リュードベリ定数)で 1/λ を求めてください。
- n₁ = 2
- n₂ = 3
- 1/λ = R · (1/n₁² − 1/n₂²)
- 1/λ = R · (1/4 − 1/9) = R · (9/36 − 4/36)
1/λ = 5R/36
自分でチェック
よりエネルギーの大きい光子はどちらですか:n = 2 から n = 1 へ(ライマン)、それとも n = 3 から n = 2 へ(バルマー)?
- 正解: ライマン(n = 2 → 1)
- バルマー(n = 3 → 2)
- 同じエネルギー
正解! n = 1 まで落ちるほうが n = 2 まで落ちるよりエネルギーの飛びが大きいので、ライマンの光子はエネルギーが大きく、可視光ではなく紫外線になります。
遷移 n = 2 から n = 1(ライマン系列の第1線)で、R で表した 1/λ は?
- R/4
- 正解: 3R/4
- 3R/2
そのとおり! 1/n₁² − 1/n₂² = 1/1 − 1/4 = 3/4 なので、1/λ = 3R/4。これがライマンアルファ線です。
どこで見られるか
水素放電管は、なめらかな虹色ではなく特定の薄紫がかったピンクに光ります。そして天文学者は、星の原子がスペクトルに開けた暗線から、その星の成分を読み取ります。どちらも、電子が固定された段の間を落ちることから生じています。1回落ちるたびに、その段と段のエネルギー差ちょうどの光子が1個放出されるのです。
よくある誤解
まず、どの遷移が勝つか。落差が大きいほど高エネルギーの光子が放たれます。段は上に登るほど間隔が詰まるため、n = 1 へ落ちる遷移(ライマン系列)は n = 2 へ落ちる遷移(バルマー系列)より大きなエネルギーを放ちます。次に、段の計算です。光子の 1/λ が引くのは逆2乗です。だから n = 2 から n = 1 への場合は 1/1² − 1/2² = 1 − 1/4 = 3/4 となり、1/λ = 3R/4 が得られます。n の値をそのまま引いたりしてはいけません。
つながり
エネルギーの量子化が原子の世界へ入っていきます。光電効果で登場した光子が、原子がそもそもなぜ鋭い線を放つのかを説明してくれるのです。しかしボーアの段は仮定されたものであり、説明されたものではありませんでした。その「なぜ」を与えてくれるのが次の物質波です(許される軌道は定常波である)。だからこそこの模型は、輝かしい踏み台として教えられるのです。