特殊相対性理論:時間の遅れ
時間の遅れ
光の速度に近い速度で動くものは、外から見ている人より時間が遅く進む。これは時計のトリックではなく、時間そのものが本当に伸び、運動する物体は運動の方向に沿って同じ因子で縮む。
公式
Δt = γ · Δt₀ , γ = 1 / √(1 − v²/c²)
- Δt — 遅れ時間 (s): 時計が通り過ぎるのを見ている観測者が測る時間間隔
- Δt₀ — 固有時間 (s): 時計と一緒に動いている人が測る時間間隔
- v — 相対速度 (m/s): 時計が観測者に対してどれだけ速く動くか
- c — 光の速さ (m/s): 普遍の速度上限。約 3×10⁸ m/s
- γ — ローレンツ因子 (none): その速度で時間がどれだけ伸び、長さがどれだけ縮むか
例題
宇宙船が光速の 0.8 倍で地球を通過する。宇宙飛行士の自分の時計では心拍が 3 秒かかる。地上の観測者にはその心拍は何秒に見えますか?
- v = 0.8 c
- Δt₀ = 3 s
- γ = 1 / √(1 − 0.8²) = 5/3
- Δt = γ · Δt₀ = (5/3) · 3 s
Δt = 5 s
自分でチェック
宇宙飛行士の心拍が(同じく 0.8c で)自分の時計で 6 秒かかる。地上の観測者は何秒と測りますか?
- 8 s
- 正解: 10 s
- 3.6 s
正解! γ は同じく 3分の5 なので、6 s × 3分の5 = 10 s。
今度は船が光速の 0.6 倍で進み、固有時間は 4 秒。地上の観測者は何秒と測りますか?
- 3.2 s
- 4.6 s
- 正解: 5 s
そのとおり! 0.6c で γ = 1.25 なので、4 s × 1.25 = 5 s。
どこで見られるか
GPS衛星が積んだ時計は地上の時計と測定できるずれを示し、システムは毎日その補正を行っています。高度では重力が弱いため衛星の時計は速く進み、軌道速度による遅れをわずかに上回ります。上層大気で生まれた宇宙線ミューオンは、地上に届く前にとうに崩壊しているはずなのに、大挙して届きます。光速近くの速度では、彼らの内部時計がゆっくり進むからです。
よくある誤解
繰り返し現れるひっかけは「どちらの時間が伸びるか」です。外の観測者が測る、遅れを含んだ時間は、動いている側の自分の時計の固有時より常に長くなります。γ を掛けるのであって、決して割ってはいけません。0.8c では γ は 5/3 なので、船の中の 6 秒の心拍は地上では 10 s かかります。0.6c では γ は 1.25 で、固有時 4 s が 5 s になります。同じ因子が、運動方向に沿った長さを縮めます。
つながり
ここから相対論が始まります。量子のレッスン群と並ぶ、現代物理の2本目の柱です。光子もなければ段もなく、あるのは光速度不変という事実だけで、それが空間と時間をそのまわりに従わせるのです。その最も有名な副産物である E = Δm · c² は、モジュールの最後、核の結合エネルギーとして登場します。